私の桜とは違うもう一つの桜のお話です。
この時期といえば桜。桜はいろいろな事を考えさせてくれますね。
桜を見に行く車旅
今回の車旅の目的地は根尾。薄墨桜を見に行くのが大きな目的でした。
薄墨桜といえば宇野千代先生。岩国のご自宅にも移植されたというご縁の深い桜です。
また、おそらくご自分をモデルにされた「薄墨の桜」という小説をお書きになっています。
宇野先生は淡墨桜のことを小林秀雄さんからお聞きになり、尽力されて老木を復活させています。
今では堂々たるその桜に毎年たくさんの人が訪れ、堪能されるとのことでした。
私も一宇野千代ファンとしてばぜひ訪れたい場所でした。
今回ちょうどいい時期に休みを取ることができ、ここはひとつ薄墨桜を見に行こうと根尾に向かったのでした。
淡墨桜が咲くころは大変な混み様であるとの情報から前乗りすることにしました。
いろいろな情報を見ると、朝の7時には着いていないと渋滞に巻き込まれる・・・とのこと。
仕事終わりに出かけ、車中泊をして早い時間に桜の元に行くことにしました。
高速道路で向かう最中もあちこちに桜が咲いています。
満開は過ぎて、場所によってはもう散ってしまっていたりもしましたが、まだまだ桜は咲いていました。
宇野千代先生が愛した谷の古木。写真では何度も見ていますが、それが見られるのかと思うとわくわくしてきます。
どこまで枝を伸ばし、どれほどの花を咲かせているのだろう。
薄墨公園という場所にあるようでさすがに天然記念物に指定されており、近くまで行って触ることなどできないようになっているようでした。
桜を含め、樹木は近くに行くことで根をやられると聞いたことがあります。
触ってそのパワーをもらいたい気持ちはありますが、木の命の方が大切です。
遠くからでも宇野先生がご覧になった姿は愛でることができるでしょう。
私はわくわくしながら道の駅「うすずみ桜の里 ねお」に着いたのでした。
不思議なことに道の駅は静まり返っていました。
桜を見ようと私のような車中泊民がいて車が停められないのではないかと危惧していたのですが、全くの杞憂に終わりました。
駐車場にはだれもいません。時刻は夜中の0時を回ったところ。
私は街頭から少し離れた満開の桜の下に車を停め、支度をしてすぐに休むことにしました。
薄墨公園へ
朝、6時ごろ足元の寒さで目を覚ましました。
今回は気温も高くなっており、冬用の寝袋は持参しませんでした。夏とほぼ同じような装備で寝たのですが、少し時期が早かったようです。さすがに朝は寒くなり目が覚めました。
それでも熟睡できたようで目覚めは普段より爽快です。
珈琲を自動販売機で買い、持ってきたパンを朝ごはんで食べます。
時間もいいころ合いになりました。
渋滞にならないうちに行っておこう。
そう思い、道の駅を出発しました。
道の駅うすずみ桜の里ねおから薄墨公園までは車で10分程度。
渋滞に巻き込まれたらこの道が2時間かかるそうです。
ドキドキしながら運転していましたが、全然道は混んでいません。
私の作戦勝ち!そう思いながら薄墨公園へ続く一方通行の道を曲がりました。
すぐに駐車場が見えてきます。
ガラガラです。車は2,3台というところでしょうか。
意外とこの時間は余裕があるんだな・・・そう思いながら車を停めました。
駐車場から淡墨桜がある公園までは丘を登るような形で少し歩きます。ほんの5分程度、道の両側にちょっとした食べ物を出してくれるお店が続いていますが、朝早いこともあってほとんど閉まっていました。
あの角をまがったら、先生の淡墨桜があるのかしら・・・。
私はドキドキしながらその角を曲がりました。
薄墨桜との出会い
角を曲がると広い公園が見えました。
そして巨木が鎮座していました。
誰の目にも一目でわかるその威風堂々たる姿・・・薄墨桜でした。
というか、たぶん薄墨桜、なんです。
私の前に立つその巨木には花がなかったのです。
これは・・・散ってしまったのか咲く前なのか・・・・。
判断しかねました。
なぜならその枝にはほとんど花がなく、ほんのひと群れ数輪だけ花があるだけで、咲いていた雰囲気がないのです。
桜は散ります。散ってしまえば周りに花びらが散乱し、枝には緑の葉が花の代わりに姿を現します。
その姿がなかったのです。
地面にも花びら一つありません。
これってもしかして早すぎた??
それでもその木の迫力はすばらしく、花がなくても圧倒される姿でした。
すこし離れたところには満開の枝垂れ桜があります。
なおさらこの状態がどういうことなのかわかりかねました。
ここでやっとHPで淡墨桜の開花状況を確認してみることにしました。
里の桜が満開を少し過ぎたくらいだったので、淡墨桜もそれなりに咲いていると思い込んで調べもしませんでした。
目の前の状況を確認するにはもうHPで調べるしかありません。
HPには「散り果て」とありました。
花は終わっていたのです。
こうして私の淡墨桜との初めての出会いは終わりました。
またいつか
薄墨公園はたとえ主役の桜が終わっていてもとても気持ちのいい公園です。
たっぷり1時間ゆっくり散歩をしました。
景色もいいし、淡墨桜はなくても枝垂れ桜は緑に映えて驚くほどきれいです。
大きく枝を広げた古木の桜はその存在だけで見る価値があるものでした。
人も少なく、のんびりできました。
残念だったのは公園内のさくら資料館や宇野千代グッズのお店が時間が早すぎてしまっていたこと。
またこれもそのうち見に行かねばならないでしょう。
(私は資料館や文学館を訪れてスタンプを集めることもしています)
もちろん桜を見たい気持ちは大きいですが、今回はご縁がなかったんだと思います。
なんとなくですが、花のない淡墨桜が気に入ってしまいました。
来年は少し調べて、もう少し早く訪れてみたいと今から考えています。
また目標ができました。
旅は楽しいですね。